ヴァイオリンを購入
この1ヶ月、生涯を共にできるヴァイオリンを探しまわっていました。
愛用中のヴァイオリン(通称・おじいちゃん)は大好きなのだけれど、音、サイズ等、もっと好きな子を見つけたいなと思ったのがきっかけ。
おじいちゃんを手にいれた時は、ほとんど他の楽器をみたり、くらべたりはしなかったのだけど、今回が私にとっての最後のヴァイオリン購入になるので(今後、買い換えはありません)、なるべくたくさんの楽器をみようと決めていました。
弾く場所が変わっても音を比較できるようにとおじいちゃんをえっちらおっちら背負い、数日にわけて、大手楽器店から個人ディーラーさんの構えるお店までいろんなお店を巡りました。
シャコンヌ(東京吉祥寺店)
ベルク・バイオリン工房
島村楽器(ちょうど、フェアが開催されていました)
クロサワバイオリン(渋谷店、新宿店、お茶の水店)
ミュージックプラザ
ダ・ヴィンチヴァイオリン
下倉バイオリン
コト
チャキ弦楽器
ヨシオ弦楽器
松尾弦楽器(東京店)
私が探しもとめるヴァイオリンの条件は以下の6点。
・サイズがちいさめ、小ぶりであること(4/4でも数ミリちいさめ。7/8も視野にいれて)
・おじいちゃんは落ち着いた男性の声なので、甘くきらきらとした女性の声のする楽器
・おじいちゃんより音が大きな(遠鳴りする)楽器
・新作ではなく、50年以上は経っている楽器
・割れがなく、健康な楽器
・(できるだけ)私が好きな外見であること
おじいちゃんは7/8ヴァイオリンなのだけれど、身体が小柄かつ固い私にはとても持ちやすくて長時間弾いても身体が痛みませんでした。
数ミリ違うだけでも構えた時の感じがだいぶ変わるのだとおじいちゃんから学んだ私は、ずっと使ってゆくヴァイオリンもちいさめにしたいと考えていました。
ただ、どのお店にも数ミリちいさなヴァイオリンの在庫はあまりなく、私の予算に合う楽器ともなると、ひとつのお店につき1~8丁ほどしか見つからず……。
見せてもらったヴァイオリンは40挺ほど。標準ぴったりサイズもいくつか弾かせていただきました。
その中からさらに私のわがままな条件に合う楽器となると、残り数挺。
取り置きした、あるいは取り置きはしなくとも記憶に残っている楽器
チョコレートのよなイギリス製のヴァイオリン(7/8)
オイルニスの質感といい、濃いめのブラウンといい、チョコレートを彷彿とさせる楽器。
かたちも愛らしく、こころがときめきました。
つややかかつ甘い音色。音量はややちいさめ。
円高の影響でユーロが安くなり、価格は2割ほど落ちているそうです。
(島村楽器の弦楽器フェアの楽器も秋に仕入れたため円高の恩恵を受けているとのこと)
写真を撮ってくらべてみたところ、おじいちゃんよりもちいさな印象。
おじいちゃんよりはすこし大きな楽器が欲しかったのと、ところどころのニスがはがれ、傷ついていたり、すりへっていたりで、健康な印象を受けなかったので見送りました。
けれど、上等なチョコレートみたいで、すごくすごく可愛かったなあ。
弦楽器フェアで店員さんが探してくれたモダンフレンチヴァイオリン
色はあかるい黄色。ボディサイズは標準だけど横板の厚みがほんのちょっぴり薄い楽器。
甘くて深くてあかるい、美しい音がしました。
楽器店付属の音楽教室の講師がそのヴァイオリンを使って演奏してくださったのですが(タイスの瞑想曲だったと思います)、引きこまれそうな音でした。
その方には4挺ほど弾いていただいたのですが「この楽器が一番弾きやすい」とのこと。
音を引きだしやすく、楽器が手助けをしてくれている感じがするそう。
ただ、私にはサイズがすこし大きく感じられ、身体になじまなかったので見送りました。
ぴかぴかのコラン・メザン(7/8)
こちらも弦楽器フェアにて。
フェアのために7/8サイズのヴァイオリンを4挺ほど仕入れたと聞いて、「7/8がいっぱい……!」と興奮しつつ弾かせてもらったうちのひとつ。
考えている予算よりすこし安め。色はオレンジがかった赤茶色。ぴかぴかの綺麗な楽器。
7/8なのだけど横板の高さがあるのか、そんなにちいさくは感じられず。
(それでも、私にとって、標準の4/4よりはだいぶ弾きやすかったです)
あかるくて硬質な感じの音。
連れていったおじいちゃんの音のほうが私好みだったため、候補には残しませんでした。
とてもハンサムな子でした。
ころっとまるっこいフランス生まれのマシェリ(7/8)
撮ってきた写真を長いこと眺め「マシェリ(かわいいひと)」と呼び、傍に置くことを本気で考えた、フランス製のノーラベルヴァイオリン。
ラベルはないけど1890年にコラン・メザンのコピーも手がけていたメーカーがつくった、
量産のヴァイオリンだと教えてもらいました。
量産とはいえ、木目の詰まった良質そうな木でていねいにつくられた、綺麗な楽器です。
色は落ち着いたブラウン。ふわりとまるいフォルムが可憐で、まさにフランスの女の子。
音も女の子の音。おじいちゃんよりも遠鳴りするけど、驚くほどの違いはなかったので購入には至りませんでした。
けれど、私も夫もとても気に入った、忘れられないヴァイオリンです。
ミントコンディションのフレンチヴァイオリン
1934年に製作された、マスターメイドのヴァイオリン。とろりとろけるイエローカラー。
ほとんど新品状態で(ミントコンディションと呼ぶのだそう)76年も経っているとは思えません。
お店のかた曰く、辞典にも載っている、名のある職人さんの手によってつくられたものとのこと。
楽器についてほとんど知らない私から見ても細かなところまでていねいに仕上げられていました。
楽器内部に貼られていたラベルも几帳面に書かれていて、つくり手の愛情を感じました。
きらきら輝く、あかるい音だったと思います。
横板の厚みはやや薄かったのですが、私にはちょっぴり長めのサイズかなと感じたので(黄色系よりも茶色系が好きなこともあって)、後ろ髪引かれつつも見送り。
ベルリン生まれのハンサムヴァイオリン
「フルサイズですが、こぶりに感じる楽器です」とお店のかたに渡されたヴァイオリン。
横板も高くなく、ボディもややちいさく、持ちやすくて身体にしっくりとなじみました。
何より、ニスの色合いが、裏板(一枚板でした)の模様が、渦巻きの感じが、横板の縞々具合が、私の好みのもろどまんなか。
夫もタイプだったのか、ふたりで「綺麗だねえ」と盛りあがりました。
が、音色は温かくやわらかな男性声で私の条件には合いませんでした。
他のお店で店員さんからいわれてとても印象的だった言葉があります。
「嫌いな音でなければ弦や調整で多少は変えられるけど、お顔はずっと変えられませんから……」
とくに女性は、外見が好みであることも大切ですね、とのことでした。
妙に説得力のある言葉で納得したのだけれど、この楽器を見た時にその言葉を思いだし、こんなに好みの子ならずっと愛せるかも……、とぐるぐる考えました。
ちょうど、よその楽器店で取りおきしてもらっているお気にいりのヴァイオリンがあり、しかしその楽器は、私にとってはそら恐ろしいほどに予算オーバーで、だからこそ予算ぴったりで、外見の好きなヴァイオリンによろめいたのかもしれません。
けれど、時間が経つたびに私のなかで存在が大きくなっていったのは予算超えの子のほうでした。
それからもいくつか楽器店をめぐりましたが、何を見ても気づけば予算超えの子とくらべていて、あの楽器に会いたいと想いは募るばかり。
取りおいてもらっている楽器店を再度訪ね、試奏し、このヴァイオリンを迎えようと決めました。
12月25日にやってくる予定なので落ち着いたら紹介したいと思います。
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